WBSCソフトボール世界選手権でアメリカが日本に勝った決定的な理由とは。
- 2018.08.13
- softball

海外のローカルチームでソフトボールをしながら、東京オリンピック代表選手を目指すアスリートライターの本庄遥(@number_1h)です。→アスリートライターとは?
私が1年半ソフトボール経験をしてきて「日本の育て方」と「オーストラリアの育て方」について感じたことがありました。
そんな中、先日アメリカと日本がWBSCの世界選手権大会を行なっていました。
今回はアメリカが日本に勝てた理由について書いて行きます。
試合結果
延長10回の末、6vs7で日本がアメリカに負けました。
?世界ソフト?
決勝トーナメント 決勝
<ZOZOマリン>
??日本 6 ? 7 アメリカ??タイブレーク突入、
延長10回の戦いも…
SOFTJAPAN惜しくも準優勝?会場からは割れんばかりの拍手✨
リベンジ…2年後に必ず…‼︎▼SOFTJAPAN結果・詳細はこちらhttps://t.co/I6YOegZdtc pic.twitter.com/gmaTai75jb
— JAPAN Softball (@JSAteamJAPAN) 2018年8月12日
私が今から言う内容は、ものすごく上から言っているように聞こえるかもしれません。
気分を害する方もおられるかもしれません。
ですが、今後日本の大切な未来のソフトボーラーを一人でも守るために正直にお話しするので、この記事を最後まで読んでいただけると嬉しいです。
では、決勝リーグ1試合目と昨日の決勝を見て感じたことを振り返りながら行きましょう。
結論から言うと、アメリカが勝つことが必然的な大会内容だった。
私は、前日に行われたアメリカとの一戦目で「アメリカが優勝するな」と確信がありました。
私は「アメリカvs 日本」 以外の試合でアメリカのことを全く見ていません。
にも関わらずこの想像ができたのは、
今身近でオーストラリアの生き生きした子どもたちや大人たちのプレースタイルと、
日本の勝つことが全て主義を見て来たからだと思います。
ピッチャーが試合の7、8割を決める試合と言われている中、日本の投手としてベンチに入っているのは4人、アメリカで投球していたのは5人でした。
その中で決勝トーナメントを投げたのは、日本は2人、アメリカは5人でした。
試合は真夏に行われたので、高温多湿で体力的にかなり厳しい状況です。
体力的な問題以上に、私はピッチャー側の目線に立って日本のピッチャー陣とアメリカのピッチャー陣の気持ちになって考えました。
日本のピッチャーの気持ち
1回目のアメリカ戦では、藤田さんが8回全て投げました。
ここでの藤田さんの気持ちは、
「明日の試合があるから、絶対に私が投げ切らなくては。上野さんの負担を減らさなきゃ。」
おそらくこう考えていたと思います。
インタビューでも答えられていましたが、「上野がいないと思って投げろ」と言われてたそうです。
ソフトを経験されている方、野球経験者の方でも彼女の気持ちは想定できる内容だったと思います。(藤田さんを下げて次のピッチャーを投入するべきだと思うタイミングは何度もあったかと思います。)
替えてもらえない、さらに絶対に負けは許されないメンタル状況です。
また、上野さんのメンタル面を想像して見ました。
「私が打たれたら、日本は勝てない」
そう思っていつも投げられているでしょう。
実際に他の選手がほとんどの試合に出ておらず、現状は他から見ても予想も全くつかない状態です。
これも今回の試合の前の別の記事のインタビューで、
「次のピッチャーが育っていないから私を脅かす存在が出て来てほしい」
とおっしゃっていた記事を見ました。(メディアが全てじゃないので、あくまでもそう言った可能性があるとして)
今回の大会の上野さんを見た時にこんなことを思い出しました。
私自身も、大学時代に「本庄の腕が取れたら棄権する」と言われて試合に望んだことがあります。
確かに、エースにとっては嬉しい言葉にも取れますが、大きな負担になることは間違いありません。
ましてや試合の7、8割はピッチャーで決まると言われているソフトボール。
「私でこの試合の勝敗が決まる。」
そう思って投げなければいけません。
日本を背負って投げる彼女たちに対し、チームの中でもずっしりと責任を背負っているイメージは容易に想像できますよね。
アメリカのピッチャーの気持ち
次にアメリカのピッチャーの気持ちになって考えていました。
ここでアメリカのエースアボットのパーソナリティ、ファンへの対応について紹介しておきます。
実は、私はよくアボットと英語で会話をしています。
というか、ファンに対しての返信頻度が非常に高いです。
返信が返せないなら、ハートだけ送って来たりいいねをしてくれたり。
返信が仮にできなかったとしても、既読をつけてくれたりとかなりファンのことも大切にしています。
英語がうまく話せない私に対し、ほとんど丁寧に返してくれます。
これはほんの一部ですが、私が初めてアボットに連絡をしたときのことです。
アボットが日本語が難しいと言っていたことに対して、私も英語が時々混ざるよ〜と言ったことに対しての返信です。
少し話が逸れましたが、トップオブトップの選手が大切な大会前でも気さくにファンの人とチャットを繰り広げられるのはかなりの強みですよね。
世界選手権で東京オリンピックの出場権もかかっている試合にも関わらず、試合と試合の合間にこういったファンサービスができるのは、気持ち的にも余裕があり試合自体を楽しんでいることがわかります。
さて、ここから日本のピッチャー陣達とアメリカのピッチャー陣の違いを見ていきます。
アボットは試合を見る限り間違いなくアメリカのエースです。
しかし1回目の日本戦で硬くなってしまったのか、かなり早い段階で打たれてしまい他のピッチャーに替えられてしまいました。替えてもらいました。
日本は調子が悪くてもなんとか試合にでている人(上野さんか藤田さん)で抑えようとしますが、
アメリカは調子が悪かったら、すぐに他のピッチャーに替えて流れを変えようとしました。
ここが決定的な違いです。
アボットには信用できる自分以外のピッチャーがたくさんいました。
アメリカは、ピッチャー陣の誰が投げても勝てるチームに出来上がっていました。
ピッチャーの交代のときに、悔しい顔をするよりも次の子に「頑張れ!」と言えるチームに出来上がっていました。
もちろんマウンドを降りるときに悔しさはあるとは思いますが、
それだけお互いのことを信用できる関係、頼れる関係に出来上がっていたんですよね。
ただでさえ負担がかかるポジションの責任を分散していることがわかります。
1人で投げる美徳というものはなく、どんどんいろんな選手を投げて投げれる子を投げさせる。
そういったスタイルがアメリカの投手の一人ひとりのプレッシャーを軽減させていたんですね。
体力的にも勝利が遠すぎた日本
上野さんは、世界一のピッチャーです。
ですが、永久的に投げれる鉄人でもなければロボットでもありません。
1人の人間です。
彼女はすでに膝に大きな爆弾を抱えながら投げています。
今はそれを庇いながら、投げ続けています。
年齢的にも考えて彼女にも体力の限界があります。
決勝でタイブレークになった時点で、日本の負けが決定したようなものでした。
この日上野さんは決勝戦の前にすでにカナダとの試合で1試合投げ切っていました。
単純計算で一試合80球。
2試合で160球。
そこからタイブレークに入るとなると200球近く投げることが決定します。
タイブレークに入った時点で、体力を温存させていたアメリカのエース・アボットと戦わなければなりませんでした。
どっちが有利でしょうか?
どっちが勝つ確率が高いでしょうか?
冷静に考えたらわかることだと思います。
相手にも上野さんしか投げないと思わせてしまっている戦略
北京オリンピックから何年も経った今、優勝したときと同じ上野投手が今も投げています。
どれだけすごいピッチャーでも目は慣れてくるし癖や配球、攻め方もだんだんわかって来ます。
それでもあそこまで抑えている上野さんは、超一流ピッチャーとしか言いようがありません。
逆にあれ以上求める方が不可能に近いです。
上野さんが北京まで隠していた、「シュートボール」も今ではアメリカの選手誰もが上野さんがシュートを投げれることを知っています。
体力的に厳しいのも、プロフェッショナルの彼女たちなら間違いなくわかっていたでしょう。
延長すればするほどアメリカの勝率が上がるのことも間違いなくわかっていたと思います。
そう思わせてしまうのは、上野さんしか投げささない姿勢をいつまでもいつまでも崩さずにここまできてしまったからです。
世界一のライザー(Kelly Barnhill)を完璧に使いこなす監督の凄さ。
私が勝手に呼んでるだけですが(笑)
おそらく私のように彼女に目をつけている人は多いのではないでしょうか?
彼女の世界一のライズを見逃した方、是非アメリカと日本の試合を見返して見てください。
アメリカの監督の彼女の使い方が、今回の勝利のキーポイントにもなっていたので彼女を例に挙げて紹介します。
(https://www.teamusa.org/usa-softball/athletes/Kelly-Barnhill)から引用
なぜ彼女をピックアップしたのかというと、
「ワンポイント起用のためだけにベンチに入っているから」です。
このピッチャーの特徴をあげると、
・ライズが男子並みに上がる
・他の代表選手と比べるとコントロールがかなり悪い
この二点が挙げられると思います。
試合を見た方は知っていると思いますが、日本との試合の時、1回目の試合はたった1人のバッターを投げてベンチに下がり、2試合目は1回とワンアウトまで投げて交代しました。
こんなピッチャーの起用の仕方、日本でできますか?
見たことありますか?
この使い方は、彼女の個性を最大限に生かしチームにとって掛け替えのない存在に仕立て上げています。
彼女のモチベーションが上がるのはもちろん、チームとしても流れを変えるための重要な役目をしていることがわかりました。
こういう使い方をすることで、ピッチャー一人ひとりも役割がわかりどういう使われ方をするのか個々が予想もしやすく、当本人たちも準備がしやすいうえ、モチベーションを常に保ちながら試合をすることができます。
強いチームのピッチャーは継投である
今回の大会や、インターハイのチームを見てもわかるように、真夏に行われる試合はメンタル面以外にも体力が保てるか否かはかなり大きなポイントになってきます。
いいピッチャーが1人や2人だけよりも、ある程度抑えられるピッチャーが3人以上いる、あるいは要所要所で抑えられるピッチャーがいることで一人ひとりの負担を格段に減らすことができます。
まずは、責任を持って投げさせる(それだけのリスクを監督やコーチが背負ってあげるくらい信用して使ってあげる)そうすることで選手は間違いなく伸びます。(私が選手の気持ちとしてチャンスをもらったらモチベーションが上がったから)
そういうピッチャー陣を作れば自ずと怪我も減ります。
最後に。
日本のみなさんに聞きたいことがあります。
ソフトボールをしている理由はなんですか?
勝ちたいからですか?
いいボールを投げたいからですか?
一番の根本は違うと思います。
楽しいからやってるんですよね?
インターハイ優勝経験があるので、ここは偉そうに言わせてもらいますが
勝っただけでは何も残りません。
私がなぜ優勝するために今まで頑張ってきたのかを考えたときに、
一緒にプレーしてる同期、先輩後輩と1試合でも多く試合をしたかった。
試合をする、みんなで勝ちにいっているのが楽しかっただけだったんです。
優勝したときにわかってもいいとは思いますが、楽しいからソフトをしていること、もう一度思い出して欲しいです。
決して勝ちたいためだけにソフトをしているわけではないと思います。
勝ちの向こうに見えない景色があって、ワクワクする、監督が喜ぶ、そんなイメージがあるから頑張れますよね。
勝つことだけを目標にせず、なんのためにソフトボールをしているのかを、もう一度考えてみてください。
きっと今以上に楽しくソフトができると思いますよ。
そして。
オーストラリアに来ている私から一言。
今いるチームでソフトが嫌いになりそうだったら、是非オーストラリアに来てください。
楽しかったあの頃に戻りたいなら、一度観光でもなんでもいいから試合を見にきてください。
ソフトボールを楽しんでいる人たち。一緒にプレーして褒めちぎってくれる仲間に出会えます。
せっかく関わったソフトボールを日本のソフトの一部だけをみて嫌いにならないでください。
日本という小さな世界だけをみて、肯定してしまうのはもったいなさすぎます。
パスポートを握って、飛び込んで来てください。
ブリスベンで待っています。
飛んで来たら、全力でサポートします。
連絡ください。
一緒に楽しいソフトボール、なんのために勝ちたいと思ったのかを一緒に探しましょう。
長くなりましたが、読んでくださった方々ありがとうございました。
はるか
東京オリンピックへ向けて。〜プロへの挑戦〜
私は2020年3月10日からソフトボール世界No. 1の国であるアメリカのプロソフトボールチームに入団テストを受けに来ています。
身長は154㎝で体格は決して恵まれていません。
中学時代全国大会でベスト4、高校のインターハイで優勝、大学の関西リーグでは、防御率0で最優秀投手賞を受賞。
しかしながら、日の丸を背負って投げた試合は、日韓交流戦のたった一度だけ。
防御率はいいものの、決して三振をバンバン取れるピッチャーではなく、同年代の中でも目立ったピッチャーではありませんでした。
立命館大学に入学し、1回生の秋からほとんどの試合を任せてもらうようになり、エースとしてマウンドに立ち続けてきました。
しかし、過度な投球が原因で肩を負傷。
上野さんたちが戦っている日本ソフトボール界の頂点である「実業団」に挑戦するイメージはどんどん消えてきました。
ある日、夢の中でアメリカのプロリーグにスカウトされました。
夢を見たことがきっかけで海外でソフトボールを続けることを決意。
2017年11月からオーストラリアのブリスベンに1年半ソフトボール留学し、QLD州(ソフトボールが最も盛ん地域)U23の代表に選ばれました。
オーストラリアで、自分のピッチングが通用したことが
自信になり、ソフトボール世界No.1のアメリカで、プロを目指すことを決めました。
人間、諦めなければ必ず夢は叶うと信じてここまで取り組んできました。
アメリカのプロになる事は、決して簡単なことではありません。
しかし、どうしてもこの夢を叶えて日本人初のプロソフトボール選手になりたいのです。
そして、日本から私以降にアメリカでプロになる選手を増やし、日本の競技力向上を図ります。
私のファンクラブにて、今後の展望をお伝えしておりますので、是非ご覧ください。
このファンクラブは、みなさんと一緒に夢を追いかけるためのコミュニティです。
ぜひご入会いただき、一緒に夢を追いかけてみませんか? ファンクラブはこちらから
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